第2号 首相の靖国神社参拝がなぜ問題なのか。

メール通信 、昔あったづもな 第2号     発信者 小澤俊夫(小澤昔ばなし研究所)

首相の靖国神社参拝がなぜ問題なのか。

 安倍首相は「国のために命を捧げた英霊に参拝することは、どの国のリーダーもすることだ」と述べていた。これには隠した部分が二つある。第一は、靖国神社には第二次世界大戦における日本の戦争責任者が合祀されているという事実である。
 第二は、靖国神社に祀られている人は、国のたに命を捧げた人すべてではないし、祀られていても、祀られることを遺族が拒否して、訴訟を起こしている場合もあるのである。つまり、息子、あるいは夫は戦死したが、そもそも無理矢理かり出されて兵隊になったのであり、被害者である。それなのに国家が勝手に英霊に仕立て上げて、靖国神社に祀ることは遺族として耐えられない、という訴訟がある。韓国人からも訴訟が起きている。そういう無念の思いを無視して、「国のために命を捧げた英霊」と、美しい言葉でかたづけることは、一国の首相として極めて無責任である。
 歴史的には、靖国神社は、戊辰戦争での官軍の戦没者のみを祀った鎮魂社だった。現在から見れば、戊辰戦争の官軍と賊軍はどちらも近代日本を作る上での戦いを戦ったのであ  る。しかし、賊軍の死者は祀られていない。そういう歴史の事実を無視して、「国のために命を捧げた英霊に参拝する」というきれいな言葉で、素直な国民をごまかそうとするのは、全く下品で悪質なやり方である。
 しかも、このような一般的な表現で言えば、事情を知らない外国の記者などは納得してしまうかもしれないという、悪知恵(淺知恵?)も働いていたかもしれない。
 外国の目が問題にするのは、やはり第一の問題である。敗戦後、1946年から48年まで、2年間にわたって東京裁判が行われた。アメリカ、イギリス、中国、ソ連、などの戦勝国が、日本の戦争指導者を裁いたものである。ぼくは中学三・四年生だったが、戦勝国から見たら「戦争指導者」だろうが、日本国民から見たら、国民にあの非惨な戦争を強いた責任者なのだから、東京裁判とは別に、国民が開く「戦争責任者裁判」があるべきだと、ずっと思っていた。が、世の中はそんな話には全くならず、東京裁判だけでことは終わってしまった。今でも残念だし、あそこで国民が責任を追及しなかったことが、今でも尾を引いていると思っている。
 何故なら、国民から見ての「戦争責任者」なのに、戦勝国のみが裁いたので、日本国民から見ての「戦争責任」は曖昧になってしまった、しかも、天皇の戦争責任も問わなかったので、日本国民にとっては「戦争責任者」はいなくなったのである。そういう意識の中では、東京裁判が日本の「戦争指導者」として死刑にしたいわゆるA級戦犯は、日本から見ると、戦勝国が勝手に決めたもので、「戦争責任者」ではない。「お国の為に命を捧げた英霊」なのである。つまり、不当な裁判による被害者ということになる。 
 だが昭和天皇は、1978年級戦犯が合祀されて以後、一度も参拝しなかった。天皇の精一杯の意思表示だったと思うが、政府と官僚は天皇の意志を無視し続けた。
、「新しい教科書をつくる会」や石原慎太郎など国家主義的な人たちにとっては、東京裁判こそ不当に行われたものだから、いわゆるA級戦犯が合祀されている靖国神社に首相が参拝するのは、当たり前のこととなるのである。
だが、外国の目から見たら、全く別のことになる。あの大戦争を指導し、東京裁判で死刑の判決を受けた人間を祀っている神社に首相が参拝するということは、日本があの戦争を肯定していることにつながるのである。
同じ敗戦国であるドイツの場合を見ると、その違いがはっきりわかる。ドイツでは、ナチスを礼賛したり、ヒトラーの書物を出版することは法律で禁じられている。ナチスが造った強制収容所があちこちにそのまま保存されている。ぼくは、昔ばなし大学のグリム童話研修旅行の最後に、ワイマール近郊のブーヘンヴァルト強制収容所に案内する。収容棟は焼き払われているが、広い敷地全体が何もない墓地として保存されているのである。そばには、「警告の塔」がそびえている。「あの過ちは二度としない」という自分への警告なのである。このような強制収容所はドイツ各地に保存、公開されている。
ドイツで、首相がナチスの戦争指導者の墓地に参拝することなど、全く考えられないことである。過去の過ちと完全に決別したからこそ、ドイツは国際的に信用を獲得し、EU(ヨーロッパ連合)で主軸国になり得たのである。
それに比して、日本はどうか。隣人である韓国とも中国とも、首脳会談さえできない状態に自分を陥れてしまっている。国際的に信用を得ることなど、とてもできない。
こういう政治家に日本の政治を任せることはできない。(2013/12/28)
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