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第31号 日本を「イスラム国」に敵として差し出した安倍首相

昔あったづもな通信 第31号
小澤俊夫

日本を「イスラム国」に敵として差し出した安倍首相 

 宮崎での再話研究会、徳之島での再話コース、奈良での講演「昔話の音楽的性質」、福井での学習会「昔話のモティーフと話型」と再話研究会とやっているうちに、湯川遥菜さんと後藤健二さんが「イスラム国」によって殺害されました。
 ぼくはこの「昔あったづもな通信」の第30号でも、小澤昔ばなし研究所発行の季刊誌「子どもと昔話」62号でも、集団的自衛権の発動をして、自衛隊をアメリカ軍に送り出したら、日本が過激ムスリムのテロの標的になるから危険だということを書いた。それがこんなにも早く現実になってしまったのだ。近現代の歴史から何も学ぼうとしない安倍首相は政治家として失格であると言わざるを得ない。
湯川さんと後藤さんが「イスラム国」に拘束されていることを政府は昨年から知っていたのに、安倍首相は1月17日にエジプトで、二億ドル支援について、「ISILの脅威を少しでも食い止めるためだ。人材開発、インフラ支援を含め、ISILと闘う各国に支援を約束する」と演説した。この演説について1月28日の参議院本会議で、「日本を元気にする会」代表の松田公太議員は英語版を読み上げて、「(日本語に)訳すとISILと闘う国の戦闘基盤を構築するための支援になってしまう。日本人が人質になっていると知っていた政府としては、配慮がなさすぎる」と指摘したという。
まさにそのとおりである。これでは「イスラム国」が日本をアメリカに従属した敵国と認識するのは極めて自然である。安倍首相は人質の交換問題が起きてから、あの支援は避難民などの援助だと弁解したが、手遅れだった。手遅れだっただけでなく、実は演説は本音を言ってしまったのだった。首相官邸には危機管理の「専門家」が多数いるだろうに、なんとお粗末なのだろう。というか、本当はアメリカ軍への間接的、直接的援助だから、どうしても本音が漏れてしまったのだろう。
テレビの国会中継を見ていたら、この点を追及されたとき安倍首相は、「テロリストがどうとるかなど考えて行動していたら、それこそテロリストの術にはまることになるのだ」という趣旨の答弁をしていた。外交的駆け引きなど考えもしない、単純で愚かな政治家であると、ぼくは改めて思った。
安倍首相はまた、テロ撲滅まで闘うと宣言している。そして、ほとんどのマスメディアも、「イスラム国」はじめ過激なムスリムだけがテロをしているように書き立てているが、アフガニスタン戦争以来のアメリカの暴虐な攻撃はテロではなかったのか。サダム・フセインは独裁者でけしからんというわけで、大量破壊兵器を所有しているという口実でイラク攻撃を仕掛けた。だが大量破壊兵器は見つからなかった。無実の攻撃だった。そのためにフセインばかりか無数の庶民が殺された。あれはテロと同罪ではないか。最近の無人攻撃機による爆撃もテロである。病院、学校が突然爆撃され、無数の病人、子どもが殺されている。この事実を追及しなくていいのか。大規模攻撃による殺人は正当で、個人による攻撃だけがテロなのか。そんなバカなことはない。一人だけ捕まえて殺したらテロで、多数をいっぺんに殺すのは正当な戦争なのか。そんなバカなことはない。
これは安倍首相には通じない話かもしれない。だが、日本のマスメディアに関わっている人たちにはお願いしたい。アメリカがやってきたことはテロと同じだということを、日本人に常に思い起こさせるような記事を繰り返し、繰り返し書いてもらいたい。「イスラム国」だけがテロをやっているわけではないことを。そもそも戦争を起こすこと自体、してはいけないことなのだということを。(2015.2.3)
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