第56号 違憲状態の国会が違憲の戦争法を強行採決し、議事録は後付けである

昔あったづもな通信 第56号
小澤俊夫 

 違憲状態の国会が違憲の戦争法を強行採決し、議事録は後付けである
 これはもうほとんど法治国家とは言えない。しかも、内閣法制局は、内部協議の記録を残していない。日本は今や、歴史が積み上げてきた近代法治国家という枠からはみ出して、中世の独裁的君主制国家になりつつある、といわざるを得ない。
 昨日の最高裁判所大法廷は、昨年12月の衆議院選挙は「違憲状態」であるという判決を下した。これは、一票の格差が2.13倍だった小選挙区は投票の平等に反しているとして二つの弁護士グループが選挙の無効を求めた17件の訴訟の上告審判決である。
 最高裁が衆議院選挙に「違憲状態」という判決を下したのは、2009年、2012年に続いて、なんと三度目である。
 今回の判決に当たっては、裁判官14人のうち9人が「違憲状態」としたが、3人は明確に「違憲」としたのである。「合憲」とした判事も2名いたそうだが。判決では「選挙無効」の訴えは退けた。「選挙無効」となれば政治的大混乱が起きるので、それを避けたのであろう。
 最高裁判所が政治的配慮をすることの是非も問題にしなければならないが、国会が「違憲状態」のまま何年も運営されること自体が大きな問題である。国会は、最高裁判所の政治的配慮をいいことに、ゆがんだ選挙制度のもとに成立している現状をフルに活用して、自民党の独裁を進めているのである。自民党は、現状で圧勝できるのだから、選挙制度に手を付けるなど考えもしない。国会の「違憲状態」に支えられて、あの違憲な「戦争法案」が採決されたのである。
 ほとんどの憲法学者たちが違憲であると指摘したのに、自民・公明の政府は「違憲状態」の国会であの「戦争法案」を強行採決した。
 その上、委員会での記録は、「聞き取れず」なのに、採決は行われたことになっている。記録をこんなに軽々しく扱うのは、民主主義国家としては基本的欠陥である。

「法の番人」の記録隠滅
「記録軽視あるいは無視」行為を安倍首相の政府も平気で行っている。それは内閣法制局である。内閣法制局は法的な側面から内閣を補佐し、首相に意見を述べる政府内の機関で、これまで、内閣の憲法解釈をになってきた。特に憲法九条の規定を守って、自衛隊の海外派遣にたがをはめるなどして、「法の番人」とよばれてきた。
 今回の、政府による憲法解釈の変更を巡っては、横畠法制局長官は国会答弁で「法制局内で議論をしてきた」と述べていた。しかし、法制局が内部協議の記録を残していなかったことが判明した。そうなると、憲法についての歴史的な解釈変更に当たって、法制局内でどのような協議が行われたのか、そもそも、解釈変更に異論があったのか、全員一致だったのかという基本的な事実さえ、確かめることができなくなってしまったのである。
 朝日新聞によれば、今回の憲法解釈変更にあたって、そもそも記録に残すほどの議論があったのか、という声が法制局内部からも出ているとのことである。集団的自衛権の行使を認める閣議決定案を、自民党の高村正彦副総裁や公明党の北側一雄副代表、横畠氏らによる秘密会合で練っていたという朝日新聞の報道を読んで、内閣法制局のある幹部は、「横畠さんがこの会合に出ていたなら教えてほしかった。知らなかった」と語ったそうである。ある法制局長官経験者も「内部で議論を積み上げた形跡はない。横畠長官一人で判断したようだ」と話しているとのことである。
そもそも現在の横畠長官は、安倍首相が、内閣法制局人事の慣例を破って外部から連れてきた人物である。NHKの会長と同じように、安倍首相のお気に入り人物なのである。横畠長官はその期待に応えて、憲法の解釈変更を認め、しかも協議過程の記録を抹殺したのである。
「法の番人」といわれてきた内閣法制局が正当な協議をせず、しかも記録を残さなかったことは、もうこの国は法治国家とは言えなくなったということである。
 歴代の自民党政府が守って来た憲法解釈を一内閣の閣議で変更すること自体が、正常な政治行動と言えないが、内閣法制局から変更のお墨付きを得るにもこのような異常な方法を取るとは、安倍首相は民主主義国家の首相ではなくなった。
 日本が平和憲法を護った法治国家であり、民主主義国家であり続けることを願う者は、来年の参議院選挙で自民党、公明党に勝利させないためにあらゆることをしなくてはならないと思う。野党各党にその一点のための統一戦線を要求しよう。そして、その一点を守る候補者に投票しよう。(2015.11.26)

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