第65号「参議院選挙の陰で何が起きていたのか」

昔あったづもな通信第65号
小澤俊夫

参議院選挙の陰で何が起きていたのか
 戦争法反対で、あれだけの民衆が国会を取り巻き、各地で反対集会をしたのに、選挙のふたを開けてみると、なんと、安倍政権を支える票が圧倒的に多く、国会議員の議席の三分の二を与える結果になってしまった。反対に立ち上がった人間とっては、開いた口がふさがらないような結果だが、ここは冷静に、そして正確に見ていかなければならない。野党たちは当然、精密な分析をしているだろうが、ぼくも、一市民としての考えを述べておきたい。
 この通信、第62号で報告したことだが、この四月に九州の知覧特攻記念館を久しぶりに訪問したとき、二十年前の展示とは違っていることに気付いた。若くして死んでいった特攻兵士たちの本音を語る部分が全くなかったのである。展示されていることは、国のために若くして命を捧げた者たちへの賛美ばかりだった。そこには、そもそも特攻攻撃という戦術の愚かさ、無責任さなどへの反省は全くなくて、ただただ、国のために命を捧げた若者たちへの賛美だけだった。ぼくは、この国全体が右へ地盤移動したのを感じて、恐ろしかった。
 ぼくは昔ばなし大学なるものを全国で開講しているので、あちこちの町で勉強会をする。会場はコミュニテイセンターなどが多いので、他の部屋の様子などを見ることがある。すると、「太平洋戦争を考える」とか「男女別姓を考える」などの部屋が多いことに気がつく。内容は「あの戦争はアジア解放戦争だったのだ」とか「アメリカの謀略による戦争だった」というものであることは容易に想像できる。「男女別姓はわが国固有の家父長制度に反する」という主張が聞こえて来るようである。このような、平和憲法を否定するような集会が、きっとあちこちで開かれているのだろうと思って、ぼくは寒気がしていた。知覧の経験と合わせて、ぼくは、この国が右へ地盤移動していることを、ますます強く感じていた。
 そしてだんだんに強く聞こえてくるようになっているのは、日本会議に関することである。日本会議とは、一般にはあまり知られていないようだが、右翼から極右にいたるまでの多数の団体が加盟する総体である。神社本庁から各神社、仏教のお寺まで加入しているところがあるという。つまり、庶民の隅々にまで浸透している組織であるといえる。その組織の末端が、コミュニティセンターなどでの小さな集会を開いているものと思われる。
 お寺の和尚さんや神社の神主さんから誘われたら断りにくいだろうし、町の世話役から誘われても断りにくいだろう。善良な庶民はそうやって集められ、日本会議の思想を吹き込まれているようである。
 ではその時の話題は何か。「太平洋戦争はアジア解放の戦争だった」というような過去の話もさることながら、庶民の心に最も訴えるのは、「日本が攻撃されたとき、どうやって国を守るのか」、「北朝鮮がミサイルを持ったそうだ。日本はいつ攻撃されるかわからない。だから軍備を強化して、アメリカ軍と連携することが必要なのだ」「中国が尖閣諸島を狙っている。軍備を整えないと危ない」などの話であるらしい。
 確かに北朝鮮はミサイル実験を繰り返しているし、中国は尖閣諸島周辺に公船を走らせているし、「あの諸島は明確に中国領である」と主張している。そういう現状の中で、「平和憲法では国は守れない」と言われると、多くの庶民は納得してしまったのではないか。それがあの参議院選挙の結果なのではないか。
 国会包囲に掲げられたスローガン、「平和憲法を護ろう」「子どもを戦場に送らない」は全く正しい。それはこれからも貫かなければならない。だが、それだけでは「軍備がなければ国は守れない」「命を投げ出す覚悟がなければ国は守れない」という庶民の心配を打ち消すことはできないのではないか。
 そのことが正直に現れたのがあの参議院選挙の結果なのではないか思う。
 憲法九条の規定にも拘わらず、自衛のための一定の軍事力は保持している。そこまでは一般庶民も理解していると思う。だが、「それ以上の海外派遣はしない。アメリカ軍と一体になった戦闘はしない」と言われると心配になってしまうというのが、庶民の正直なところではないだろうか。そこのところを解明して、「大丈夫なんだよ」と言わないと、次の衆議院選挙でも同じ結果が出てしまうのではないか。野党の政治家たちがその問題を真剣に考えることを期待する。
 ぼくの考えでは、今必要なのは、平和憲法を70年間守って来た国として、強力に平和外交を展開することだと思う。政治家や外交問題の専門家は、平和外交で国を守る具体的な方向を庶民に提示しなければならない。スイスは永世中立国として長年やってきた。そのことも参照にしながら、具体的な方策を庶民に示すべきである。
 「子どもは戦場に送らない」「憲法を守ろう」はもちろん重要なスローガンだが、ではどうやって国を守るの?という庶民の素直な心配を鎮めなければならないと思うのである。(2016.9.1)

第64号「自民優勢」という情報操作にだまされるな

昔あったづもな通信第64号
小澤俊夫

「自民優勢」という情報操作にだまされるな
 参議院の選挙戦に入ってから、新聞やテレビが「自民優勢の勢い」というような
記事をかかげるのが目立つ。これは明らかに、中立を装った「ニュース」を動員しての誘導だと思う。そんな策略に乗らないようにしよう。
 われわれ一般人は、新聞・テレビなどの報道は中立公正なものだと信じ込んでいるところがある。それは、新聞・テレビなどが、「われわれは中立公正な報道を目指している」というから、それをまともに信じ込んでいるのである。だが実際には、それは怪しい。新聞もテレビも、営業会社なのである。営業会社は常に官庁の支配を受けている。そして、官庁は時の政権の支配を受けている。そのことが露骨に現れたのが高市とかいう大臣の発言だった。偏向した報道をするなら電波停止もありうると脅したのである。
 政権側は脅しではないと釈明したが、報道各社は震えあがった。政府に批判的な報道をしたとされたニュースキャスターたちは外された。NHKでは、安倍首相にもっとも忠実であると言われている女性記者が政治問題の解説者として前面に踊り出してきた。
 これだけの動きがあれば、われわれ一般人の知らないところで、何かがおきていることは十分想像できる。
 参議院選挙の公示以後、早い時期に「自民優勢」という報道があちこちに現れたのには驚いた。報道各社は、自民党の顔色を窺って、この報道を自民党に捧げたのだろう。
 こんな報道に騙されないようにしよう。安保諸法案が国会で可決されそうになった時の、あの国民全体の熱気からまだ数か月しかたたないのに、「自民優勢」のはずがないではないか。これは明らかに「世論誘導」である。そんなことに惑わされずに、われわれの国、日本の将来を考えて投票しよう。
 アメリカにくっついて、戦争国家になるのか、世界に誇れる平和憲法をかかげて、世界に平和を呼び掛けていくのか。国の運命を決する重大な選挙である。それはわれわれの子どもたち、孫たち、そして子孫たちの運命を決する選挙なのである。後悔しないように、賢く投票しよう。(2014.7.5)

第63号 昔ばなし大学講演会「子どもたちに幸せな未来を」の動画

昔あったづもな通信 第63号
小澤俊夫 

昔ばなし大学講演会「子どもたちに幸せな未来を」の動画
 福島みずほ・小澤ジョイント講演会として5月24日、吉祥寺公会堂で行われたこの講演会の様子をYouTubeにアップしました。動画は前半だけですが、福島さんの講演は全部入っています。国会での厳しい質問とはひと味違って、ユーモアあり、落語家的しゃべりもあって、楽しく、かつ内容の濃い講演でした。福島さん、実は落語が好きなのだそうです。
 講演の前と後に、シンガーソングライター、橋本美香さんがギターの弾き語りをしてくれました。自作の「戦争と平和」。
 この講演会の音声記録は全部、既にYouTubeにアップしてあります。なお、福島さんのホームページには、当日の全映像がアップされています。
 女性国会議員というと、電波停止という強権でメデイアを脅したり、「歯舞」が読めない大臣だったりします。ぼくは、福島さんというしっかりした人に、これからも国会議員として、憲法擁護、安保諸法廃案、反原発で力を発揮してもらいたいと切望しているところです。
 YouTubeで「子どもたちに幸せな未来を」と検索していただくと出てきます。ぜひご覧いただき、知り合いの方々にも紹介してください。(2016.6.9)

第62号「知覧特攻平和記念会館訪問」

昔あったづもな通信62号
小澤俊夫

知覧特攻平和記念会館訪問
 昔ばなし大学の「昔ばなしの言葉シンポジウム」第3回を鹿児島県国分で開いた後、約20年ぶりにこの記念会館を訪問した。噂には聞いていたのだが、この記念会館の意味づけがすっかり変わっていることに衝撃を受けた。若き命を国に捧げたことの賛美に終始していたのである。そこには、あの特攻攻撃が如何に無謀なものであったか、いかに現実離れしたものであったか、あの計画の責任は誰にあったのか、という問題はまったく隠されてしまっていたのである。しかも若き命たちは、死ぬ日を前にして、苦しみ、悲しみ、酒を飲んで暴れた者もいたそうだが、そんなことにはまったく触れない展示ばかりだった。
 若くして死んでいった者たちは、またしても国家の都合で、その死を礼賛されることになってしまっていた。
 第二次大戦末期、アメリカ軍が沖縄に上陸して、日本は追いつめられた。そのとき、日本各地、及び韓国、中国に派遣されていた陸軍航空隊の若者たちが知覧に集められて、沖縄を攻撃するアメリカ艦船への体当たり攻撃に出撃したのだった。17歳から23歳くらいまでの若者たちが、体当たりに出撃して死んだ。その数1000名をはるかに越えたとのことだった。
 親や家族に向けて遺した遺書がたくさん並べられてあった。みんな立派な言葉で別れを告げてあった。涙なしには読めない。ひとりひとりの写真もあった。軍服もあった。別れの食事の風景。出撃の風景。そして、アメリカ軍が撮影した、撃墜される瞬間の映像も流されていた。特攻隊が乗って行ったといわれる陸軍の戦闘機も現物が展示されていた。いくつかの軍用旅館の女将さんたちが、当時の様子を話す映像もあった。
 だが、ぼくが約20年前に訪れた時には、旅館の女将さんだったというおばあさんが、若者たちが死を目前にして苦しんだ様子を赤裸々に語ってくれた。ある者は泣きわめき、ある者は父や母の名を叫び、ある者は酒に逃げて暴れていた、と話してくれた。「お国のために命を捧げますなんていうのは、表面だけで、ほんとはそんなもんじゃなかった」という言葉に、ぼくはその時衝撃を受けた。そして「それが本当だろう」と思った。
 戦争中にはよく言われたものだ、「兵隊は天皇陛下万歳と叫んで息を引き取った」と。だが、戦地から生きて帰ってきた男たちからは、「みんな、母ちゃんとか、女房や子どもの名前を呼んで死んでいった」と聞かされた。それが本当だと思った。
 今回見た記念会館の展示は、すべて、「天皇陛下万歳!」を示す展示だったのだ。出撃直前の朝飯の写真があったが、みんなにこやかな顔で、まるでこれから遠足にでも行くような表情だった。そんなはずはないではないか。
 特攻隊が乗っていたという戦闘機の実物が展示されていた。それは古臭いがれっきとした戦闘機だった。だが、指宿在住の元社会科教師だった方の説明では、「戦闘機は全くおんぼろで、練習機まで特攻機として使われた。水上飛行機まで特攻機として使われたが、時速200キロしか出ないので、海上で待ち伏せしている時速500キロのグラマン戦闘機に次々撃ち落とされた」ということだった。若者は犬死させられたのだ。この点でも真実は伝えられていないのである。
 記念会館のどこにも、あの戦争はそもそも無謀な戦争だったことは書いていない。いわんや、おんぼろ飛行機に乗って敵艦に突っ込むという自爆戦術の愚かさは何処にも書いていない。あの愚かな、無謀な自爆戦術を誰が考案したのか、その追及もない。練習機や水上飛行機でグラマン戦闘機に対抗できると、誰が考えたのかの調査もない。まるで、あの特攻攻撃が国民の自発的総意として生まれたかのような展示である。
 知覧特攻平和祈念会館は、今や、「こんなに多くの若者が、お国のために尊い命を捧げたんだよ」ということだけを宣伝する場所になってしまった。「だからあんたたちもお国のために命を捧げなさいよ」と人々に訴える場所になってしまった。靖国神社と同じ、忠君愛国の宣伝の場となってしまったのである。
 知覧には年間50万、60万人の観光客が訪れるということだった。生徒、学生も訪れるだろう。訪問者は、お国のために命を捧げることが感動的なことなのだと、学ぶだろう。
 一方では、安全保障諸法が成立してしまっている。国は兵隊を必要としている。この記念会館は若者やその家族に、国のために命を捧げる準備をさせる教育の場にされてしまっている。海上自衛隊の隊員が多数見学に来ていた。お国のために死んでいった若者を賛美する石碑もあった。
 統制国家、軍事国家へと目指している勢力が、戦争中の若者の死を礼賛することによって、庶民に麻酔をかけようとしている。日本という国は、重大な局面に立たされていると思う。(2016.6.1)

第61号「子どもたちに幸せな未来を」

昔あったづもな通信 第61号         
小澤俊夫

 昨年国会で強行採決された「安保関連法」は、ついに施行されました。現在と将来の若者を戦争に駆り立てる準備が整えられつつあります。7月に予定されている参議院選挙では、自民・公明党に絶対に勝たせてはなりません。そのためには野党が小異を捨てて、護憲、反原発、安保法廃棄で団結しなければなりません。そして、毎日の生活のなかでは、お母さんたちが安心して子供を預けられる保育所を、国家の責任でちゃんと整備させなければなりません。若者たちが将来への夢を持って働ける職場を整えさせなければなりません。
 ぼくは昔話の研究者であり、庶民が伝承してきた貴重な文化財としての昔話を、その美しい姿のまま、壊さないで伝承しようと主張している人間なのですが、日本が戦争する国になってしまえば、庶民の伝承文化財などあっという間に壊されてしまいます。そして、若者たちは殺し合いの場に駆り出されるのです。そんな日本にすることは決して許せません。そこで、昔ばなし大学としても、初めて、子どもたちに幸せな未来を贈ろうという講演会をすることにしました。
参議院議員として国会で護憲、反原発、安保法廃棄で頑張っている福島みずほさんに来ていただいて、直接お話をうかがい、勉強しましょう。ぼくたちの意見も聞いていただきましょう。そして会の参加者同士の連帯も強めましょう。子どもたちに幸せな未来を贈るために。(2016・4・8)

昔ばなし大学 講演会
「子どもたちに幸せな未来を」
 講演・進行 小澤俊夫
 ゲストスピーカー 参議院議員 福島みずほさん

福島みずほさんは、参議院予算委員会などで安倍首相に鋭く切り込んでいます。
数年前、「子どもゆめ基金」が廃止されそうになったとき、ぼくは全国の署名を集めたのですが、そのとき力になってくれて、廃止から救ってくれたのが福島さんでした。今回、お忙しい中、ぼくの希望を受け入れて、ぼくとジョイント講演会をすることになりました。福島さんのお話を真近で聞けるいい機会なのでどうぞいらしてください。
小澤俊夫


■演題 「子どもたちに幸せな未来を」
■日時 5月24日、火曜日。午後6時45分から8時30分まで。
■ 会場 武蔵野公会堂
   (JR吉祥寺駅、京王井の頭線吉祥寺駅公園口徒歩2分)
*会場は以前、国立オリンピック記念青少年総合センターとお知らせしましたが、武蔵野公会堂に変更になりました。それに伴って、申し込み不要になりましたので、知人、友人の方々も誘ってご自由においでください。
■入場料 500円 当日、会場で申し受けます。

問い合わせ先: 小澤昔ばなし研究所
〒214-0014 川崎市多摩区登戸3460−1  
パークホームズ704
       e-mail :mukaken@ozawa-folktale.com
        Tel/fax: 044-931-2050



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